自啓館だより
平成31年 1月
No.161

長さを表すメートル、質量を表すキログラム、時間を表す秒、電流を表すアンペア、熱力学温度を表すケルビン、物質量のモル、光度のカンデラの7つは、SI(国際単位系)として定義された単位で、基本単位と呼ばれています。 この中の質量については、「国際キログラム原器」と呼ばれる器物がもととなっており、それを元にして作られた分銅が、質量を計るうえでの基準として生活の中で活用されていますが、その「キログラム」の定義がおよそ130年ぶりに改定されようとしています。

そもそも単位というものは、古来、人間の身体の部位や植物の大きさなどを元にしたものから用いられ始めたとされますが、そうしたものは人によってまちまちであったり、作物も生育状況により変わってくるため、大まかな計測ではそれほど問題にならないが、細かい計測をしようと思うと誤差が大きくなるという課題がありました。 そこで、正確に単位が決まっていないと、正しい計測ができないということで、メートル条約が1875年5月20日に締結し、30本の「メートル原器」と40個の「キログラム原器」が製造されました。

ところが、30~40年に一度実施される、大元である国際キログラム原器(IPK)と各国のキログラム原器を比べて校正を行なう際に、最大50μgほど変化していることが確認されたのです。 50μgといわれるとピンと来ませんが、指紋1個ほどの質量の変化とか。 つまり誰かが一回素手で触れた程度の差。 変化した原因はわからないそうです。

そこで、原器の代替案の1つに、単一原子における原子配列の周期性の単位である格子定数が分かれば、体積に応じて原子の数を決定できる、というアイデアが出ました。 実際に半導体の製造などで高純度化がしやすく、良質な結晶を得やすいシリコンを使えば、出来るのではないかと。

新たな定義に改定される質量ですが、端的に言ってしまえば、普通の人の普通の生活にはまったく影響はありません。 残念ながら、今日まで重かった体重計が、明日から自動で軽くなる、ということはありません。 だったら、ここまで大騒ぎをする必要もないではないか、という話もあるのですが、キログラム原器の質量に揺らぎが生じた以上、全人類の基準が変化してしまうリスクをそのままにしておくことは、将来的に人類に不利益をもたらすかも知れません。 特にナノテク関連の産業や研究分野では、重大な影響がある可能性も。

長々と難しいことを書きましたが、基準というものはそれだけ大事だということですね。 勉強も同じで基本が大切。 この冬休みもう一度基本事項をしっかり身につけておきましょう。 そうでないとその上にいくら積み重ねたところで、誤差や揺らぎが大きくなります。

最後になりましたが、今年も自啓館をご利用いただきありがとうございました。来年も生徒の成績向上、受験生の全員合格を目指し、講師一同努力していきます。来年もよろしくお願いします。

163 162 161 160 159